ナラティブ・アプローチ

ナラティブ・アプローチとは、人が語る「物語(ナラティブ)」に着目し、その語りの中にある価値観や意味づけを通して、自己理解や関係性の変容、行動の変化を促すアプローチです。

心理療法やカウンセリング分野から発展し、近年では企業研修や組織開発、リーダーシップ育成の現場でも広く取り入れられています。人は自らの経験を「物語」として語ることで自己を再定義し、他者との共感や信頼関係を築くことができます。ナラティブ・アプローチは、この「語りの力」を活用して、個人と組織の成長を促す手法です。

実務上の重要性と活用場面

ナラティブ・アプローチは、表面的な問題解決やスキル習得ではなく、価値観や意味のレベルから行動を変容させるアプローチとして注目されています。

たとえば、以下のような実務場面で活用されます:

管理職やリーダーの「リーダーシップの原点」を掘り起こす

社員のキャリアや仕事観への内省を促す

組織内の暗黙の価値観や文化を言語化し共有する

チーム内の信頼関係や共通理解を深める対話の土台をつくる

組織変革のプロセスにおいてメンバーの納得感と主体性を引き出す

特に、「問い」や「対話」を通じて、多様な視点を引き出しながら語り合うプロセスそのものが、組織の学習力や心理的安全性を高める働きを持ちます。

研修や組織開発における位置づけと具体例

企業研修や組織開発の中では、ナラティブ・アプローチは「内省」や「関係性の再構築」をテーマにしたプログラムに組み込まれることが多くあります。

代表的な活用例には以下が挙げられます:

リーダー育成プログラム:自身の経験や価値観を語ることで、リーダーとしての軸を言語化

キャリア研修:過去の仕事経験の語り合いを通じて、自分の強みや働く意味を再発見

対話型組織開発:組織の歴史や変革ストーリーを共有し、共通の文脈をつくる

心理的安全性向上の場づくり:誰もが安心して語り、聴かれる体験を通じて信頼関係を構築

重要なのは、正解を提示するのではなく、「問いを通じて意味を再構築する」プロセスを重視することです。

関連キーワード(類語・略語・英語表記など)

ナラティブ、ストーリーテリング、対話、内省、意味づけ

経験学習、リフレクション、オーセンティックリーダーシップ

カウンセリングアプローチ、コーチング、組織の物語

Narrative Approach(英語表記)、narrative therapy、narrative coaching

ナラティブ・アプローチは、目に見えない価値観や関係性の質に働きかける「人と組織の深層的な変化」を促す手法です。

研修や組織開発の文脈でこの視点を取り入れることで、形式的な学びにとどまらず、本質的な成長とつながりのある組織文化の醸成につながります。