目的論
目的論(もくてきろん)とは、「人は過去の原因ではなく、未来の目的によって行動を選択する」という考え方で、アドラー心理学をはじめとした多くの人材育成理論に影響を与えている心理学的アプローチです。
原因論が「なぜそうなったのか」と過去に焦点を当てるのに対し、目的論は「これからどうなりたいのか」という未来志向に基づいて行動や思考を捉えます。ビジネスや組織開発の現場では、問題の根本原因探しよりも、行動変容と成果創出を目的とした支援が求められる場面に適しています。
実務上の重要性や活用場面
目的論の視点は、社員の自発的な行動促進、モチベーション向上、対人関係の改善などに活用されます。たとえば、ミスをした社員に対し「なぜ失敗したのか」を問い詰めるのではなく、「次にどうすれば目的を果たせるか」と未来に目を向けさせることで、前向きな行動と学習を引き出せます。
また、コーチングやフィードバックの場面でも、「その言動の目的は何か」「どうなりたいからそうしたのか」と問いかけることで、内省と成長を促すことが可能です。
研修や組織開発の中での位置づけや具体例
目的論は、管理職研修、リーダーシップ研修、1on1の導入研修などに組み込まれることが多く、特にアドラー心理学に基づく「勇気づけ」や「課題の分離」と組み合わせて使われます。
例として、リーダーが部下のネガティブな態度に困ったとき、「なぜそうなったか」を追及するのではなく、「その態度によって何を得ようとしているのか(目的)」を問い直すことで、対話の質が高まり関係性改善へとつながります。
目的論に基づくアプローチは、心理的安全性のある組織風土づくりにも貢献します。
関連キーワード(類語、略語、英語表記など)
目的論/teleology(テレオロジー)
原因論(対義語)/アドラー心理学/未来志向/動機づけ
自己決定/行動変容/勇気づけ/内発的動機
コーチング/1on1/心理的安全性/行動科学
目的論は、「人は変われる」という前提に立ち、未来志向での組織と人材の成長を支援する有効な考え方です。
人事や研修の現場で、前向きな行動変容を促したいと考える際には、目的論の導入が効果的です。