リーダーシップ発揮のための3つのプロセスと実践方法

「リーダーシップがある人になりたい」「もっと効果的にチームを率いていきたい」と考えるビジネスパーソンは多いでしょう。しかし、実際にリーダーシップを発揮するとなると、どのようなプロセスで進めていけばよいのか悩むことも少なくありません。
本記事では、リーダーシップを発揮するための具体的な3つのプロセスとその実践方法について解説します。日々の業務の中でリーダーシップを発揮したい方、チームの成果を最大化したいリーダーの方に役立つ内容となっています。
リーダーシップとは何か?
リーダーシップについての定義は様々ありますが、世界的なリーダーシップ研究の権威であるハーバード大学のジョン・コッター教授は次のように定義しています。
「リーダーシップとは、変革を推進し、組織を新しい方向へ導くプロセスである」 ―ジョン・P・コッター(1990)
この定義にあるように、リーダーシップの本質は変革を推進することにあります。そして、そのために組織やチームを新しい方向に導くことがリーダーの役目なのです。
リーダーシップとマネジメントの違いについては、リーダーシップとマネジメントの違い – 成功するリーダーの思考法の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
リーダーシップ発揮の3つのプロセス
リーダーシップを発揮するためのプロセスは、大きく分けて以下の3つで構成されます。
1. 目標の設定とその共有
リーダーシップの第一歩は、明確な目標を設定し、それをチームメンバーと共有することです。ここで重要なのは、目標が単なる数値目標にとどまらないことです。
例えば「売上20%アップ」というような数値目標だけでは、チームメンバーのモチベーションを高めるには不十分です。目標には以下の要素が必要です:
- 明確性: 達成した状態が具体的にイメージできる
- 共感性: チームメンバー全員が「これは大切だ」と感じられる
- 挑戦性: 現状維持ではなく、一定の変化や成長を要する
- 実現可能性: 努力すれば達成できる範囲である
また、目標設定に加えて、目的の共有も重要です。「なぜこの目標に取り組むのか」という意義や価値を共有することで、チームの一体感とモチベーションが高まります。
2. 率先垂範と巻き込み
目標を設定したら、リーダー自らがまず行動を起こすことが重要です。これが「率先垂範」です。リーダーが自ら行動することで、チームメンバーに対して強い影響力を持ちます。
しかし、率先垂範だけでは不十分です。次に必要なのが「巻き込み」です。チームメンバー一人ひとりの主体性を引き出し、積極的に参加してもらうことが重要です。
巻き込みのポイント:
- メンバーの意見や提案を積極的に求める
- 各メンバーの強みを活かせる役割を与える
- 小さな成功体験を積み重ねる機会を作る
- 進捗や成果を共有し、チーム全体の達成感を高める
率先垂範と巻き込みのバランスが取れたとき、チームは最大限の力を発揮できるようになります。
3. 権限委譲と支援
リーダーシップの最終段階は、チームメンバーに権限を委譲し、必要な支援を行うことです。多くのリーダー、特にプレイングマネージャーは「時間がない」「忙しい」という悩みを抱えています。
この状況を改善するためには、「率先垂範→巻き込み→権限委譲」という流れを確立し、チームメンバーに適切に仕事を任せていくことが重要です。
権限委譲のポイント:
- メンバーの能力や経験に合わせた仕事を任せる
- 結果だけでなく、プロセスも含めて任せる
- 失敗を恐れず、チャレンジを促す環境を作る
- 必要な情報やリソースへのアクセスを確保する
権限を委譲した後は、メンバーが成功するために必要な「支援」を行うことが重要です。支援とは、具体的には以下のようなものです:
- 定期的なフィードバックの提供
- 障害や問題が発生した際のサポート
- 必要なスキルや知識の習得支援
- 成果を認め、適切に評価する
この「権限委譲→支援」のサイクルが確立されると、チームの自律性が高まり、リーダー自身も戦略的な課題に時間を割けるようになります。
リーダーシップ発揮のための実践的アプローチ
上記の3つのプロセスをより効果的に実践するための具体的なアプローチを紹介します。
目標設定・共有のアプローチ
1. SMART基準の活用
目標設定には、SMART基準(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限付き)を活用しましょう。これにより、チームメンバーにとって明確で達成可能な目標を設定できます。
2. ビジョンと紐づける
設定した目標が組織のビジョンや大きな方向性とどのように紐づいているのかを明確にします。これにより、目標の意義が深まり、メンバーのモチベーションも高まります。
3. 対話型の目標設定
目標設定のプロセスにチームメンバーを巻き込むことで、オーナーシップと共感を高めます。一方的に目標を伝えるのではなく、メンバーの意見を取り入れながら設定することが重要です。
率先垂範・巻き込みのアプローチ
1. ロールモデリング
リーダーが実践する姿を見せることは、言葉以上に強力なメッセージとなります。自分が期待する行動を自ら実践し、見える形で示しましょう。
2. メンバー個々の強みを活かす
チームメンバー一人ひとりの強みや特性を理解し、それを活かせる役割や機会を提供します。メンバーのDiSC®︎スタイルを理解することも有効です。
3. 小さな成功体験の積み重ね
大きな目標に向かう過程で、小さな成功体験を積み重ねられるようにします。これにより、メンバーの自信とモチベーションを高めることができます。
権限委譲・支援のアプローチ
1. 段階的な権限委譲
メンバーの経験やスキルに合わせて、段階的に権限を委譲していきます。いきなり大きな責任を与えるのではなく、徐々に範囲を広げていくアプローチが効果的です。
2. 1on1ミーティングの実施
定期的な1on1ミーティングを通じて、メンバーの課題や悩みを把握し、適切なサポートを提供します。アドラー式One on Oneのアプローチが効果的です。
3. 失敗を学びの機会として捉える文化づくり
失敗を責めるのではなく、学びの機会として捉える文化を作ります。これにより、メンバーは恐れずにチャレンジし、成長することができます。心理的安全性の高い環境づくりも重要です。
5人の単位から実践する重要性
リーダーシップの実践において重要なのは、規模の大小にかかわらず、リーダーシッププロセスを確実に進めることです。
大企業のトップであっても、5人のチームリーダーであっても、リーダーシップのプロセスは同じです。違いは、スケール感だけです。大規模組織のリーダーほど、目標設定はより抽象的になり、「ビジョン」的な要素が強くなります。
しかし、本質的に重要なのは、5人単位であっても1万人単位であっても、リーダーシッププロセスをきちんと進めることができているかどうかです。
極端な例を言えば、1万人規模の組織のトップでありながらリーダーシッププロセスをきちんと進めていない人よりも、5人のチームでもプロセスをしっかりと実践している人の方が、実質的にリーダーシップを発揮していると言えるでしょう。
そして、重要なのは、5人の単位でうまくできない人が、1万人の単位でうまくできるはずがないということです。リーダーシップは、まず身近な小さなチームで実践し、そこで成功体験を積み重ねることが重要なのです。
自己診断:あなたのリーダーシッププロセスを評価する
ここで、自分自身のリーダーシッププロセスを評価してみましょう。以下の3つの項目について、100点満点で自己採点してみてください。
- 目標の設定とその共有: [ 点/100点]
- 率先垂範から巻き込み: [ 点/100点]
- 権限委譲と支援: [ 点/100点]
この自己評価において重要なポイントは、「目標の設定とその共有」にちゃんとした点数がつかなければ、その後の2つの項目にはほとんど点数がつけられないということです。最初のステップがうまくいっていなければ、その後のプロセスも必然的に停滞します。
また、真実は自分自身の採点ではなく、部下や周りの方々がつける点数にあります。勇気のある方は、忖度なしに答えてくれそうな人に聞いてみることをお勧めします。その結果は、あなたのリーダーシップの改善に大きく役立つでしょう。
リーダーシップを習慣化するための方法
リーダーシップのプロセスを習慣として身につけるためには、以下のアプローチが効果的です。
1. 意識的な実践
リーダーシップは理論を知っているだけでは身につきません。意識的に実践し、試行錯誤を重ねることで初めて身につくものです。毎日の業務の中で、意識的にリーダーシップのプロセスを実践してみましょう。
2. 振り返りの習慣化
定期的に自分のリーダーシップ行動を振り返る時間を設けましょう。「うまくいったこと」「改善すべきこと」を具体的に書き出し、次の行動計画に活かします。
3. フィードバックを求める
チームメンバーや同僚からのフィードバックを積極的に求めましょう。他者からの視点は、自分では気づかない盲点に光を当ててくれます。
4. ロールモデルから学ぶ
自分が尊敬するリーダーの行動を観察し、どのようにリーダーシップを発揮しているかを学びましょう。彼らの行動の中から、自分に取り入れられる要素を見つけます。
5. 継続的な学習
リーダーシップに関する書籍や記事を読む、研修やワークショップに参加するなど、継続的に学ぶ姿勢を持ちましょう。知識とスキルの幅を広げることで、リーダーシップの質も向上します。
株式会社チームダイナミクスでは、「習慣力メソッド」を活用し、リーダーシップの行動習慣化をサポートしています。このメソッドは、著書累計30万部を超える代表の三浦が開発したもので、学びを実践に結びつけ、習慣として定着させるためのアプローチです。
リーダーシップスキルの習慣化については、組織の成長を促進するリーダー育成プログラムの設計と実践でより詳しく解説しています。
まとめ
リーダーシップを発揮するための3つのプロセス「目標の設定とその共有」「率先垂範と巻き込み」「権限委譲と支援」は、チームや組織を効果的に導くための基本フレームワークです。
これらのプロセスをしっかりと実践することで、リーダーとしての影響力を高め、チームの成果を最大化することができます。また、小さなチームで実践し、成功体験を積み重ねることが、より大きな組織でのリーダーシップ発揮につながります。
リーダーシップは一朝一夕に身につくものではありません。日々の意識的な実践と振り返りを通じて、少しずつスキルを高めていきましょう。
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リーダーシップ研修プログラム
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各研修プログラムでは、「習慣力メソッド」を活用し、学びを確実に実践へと結びつけるアプローチを採用しています。詳細は各プログラムページをご覧ください。